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第6回ソフトマター工学分科会講演会・会員総会

    昨年度に引き続き、秋口11月にオンラインにて第6回ソフトマター工学分科会講演会と会員総会をオンラインで開催しました。先を見通せないコロナの状況下ということで、5月早々にオンライン開催を決断し、講演テーマの設定とご講演いただける先生方の選定を行いました。8月~9月にかけて第5波が襲ってきた頃は、オンライン開催を正当化していましたが、11月に入り全国的な収まりが見えてきた頃は、対面による現地開催も可能だったのではと少し悔まれました。その一方で、講義や校務で多忙をきわめる先生であっても、移動時間はほぼゼロで講演をしていただけるというオンラインの利点は十分に活かされました。遠方の異なる地域の先生から、いずれも医療、生体が関わるソフトマターについてご講演をいただきました。
    昨年度とは異なり、先に会員総会を開催した後、初めのご講演として東北大学の山本雅哉先生にお話しいただきました。「ソフトマターの医療分野への展開」とのタイトルで、再生医療や疾患研究への応用を中心とした、最近のご研究に関連する生体機能性材料ならびにその応用技術についてご紹介いただきました。例えば、ハイドロゲル表面に骨分化を誘導するリガンド分子を配向させて固定化する技術、細胞凝集体の深部まで薬物を送り届ける技術、さらに疾患研究用の体外モデルとして利用可能な機能性ゲルの開発例など、いずれも最先端医療に直結する貴重な研究成果(ソフトマター)を、限られた講演時間の中、わかりやすくご説明いただきました。
    引き続き、金沢大学の新井敏先生からは「生体分子濃度の時空間動態を定量可視化・自在制御するケミカルバイオロジー」とのタイトルでご講演いただきました。細胞内空間というミクロな環境で熱を操り、細胞が有する様々な機能と合わせて、産生された熱や細胞内温度を評価する技術についてご紹介いただきました。 同一細胞内の細胞質とミトコンドリアのATP動態を同時に可視化できる技術や、標的分子を認識すると蛍光寿命が変化するセンサー(蛍光タンパク質)など、今後の幅広い用途展開が期待される研究成果についてもご説明いただきました。
    最後のご講演は、徳島大学の越山顕一朗先生にご担当いただきました。「生体医工学技術開発:非平衡脂質分子動力学 シミュレーションからの示唆」とのタイトルで二重層構造を有する脂質分子凝集体に関する最近の分子動力学(MD)シミュレーション結果についてご紹介いただくとともに、生体システムで生じる非平衡現象をいかに理解して制御するか、そのアプローチについてご説明いただきました。ドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用も可能なリポソームに関するMDシミュレーションでは、リポソームの形成過程を見事に表現したシミュレーション結果を紹介いただき、脂質二重層内の不飽和脂質分子の分布によって、リポソームを形成する場合とディスク状になる場合があることを明確にお示しいただきました。また、シミュレーションで得られた興味深い結果(脂質分子の凝集構造)については実験的に検証する必要あるとの、実験系研究者への熱いメッセージも合わせていただきました。
    3件のご講演の後には、Zoom のブレイクアウト機能をつかった質問タイム(懇談会)を設け、さらにその後には、3人の先生との意見交換会(フリーディスカッション)を実施しました。写真はそのときの様子を撮影したものです。対面のようにスムーズな意見交換はできませんでしたが、今後の研究の発展につながる情報を十分に交換することができ、有意義なオンライン講演会になったと思います。