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第2回ソフトマター工学分科会講演会・会員総会

 2017年7月21日(金)に東洋大学白山キャンパス2号館16階スカイホールにて第2回ソフトマター工学分科会講演会および会員総会を開催しました。
 短い講演時間ではありましたが6名の先生方に幅広いジャンルのご講演をいただき、学生8名を含む39名の参加者は熱心に耳を傾けていました。また,質疑応答では様々な専門分野からの質問がなされ,活発な議論が行われました。

 綜研化学株式会社の横倉精二氏より「アクリルトリブロックポリマーの粘着剤への応用」と題した講演が行われました。
 アクリル系粘着剤の設計指針とその物性評価方法についての紹介がありました。また,その応用として,制御ラジカル重合で合成されるトリブロックコポリマー型の粘着剤に関して,架橋構造の有無で粘着特性を自在に制御できることが報告されました。

 東京工業大学の澤田敏樹氏より「繊維状ウイルスを素材とするソフトマテリアルの構築」と題した講演が行われました。
 繊維状ウィルスを用いた材料開発の例として,ウィルスからなる構造制御されたハイドロゲル,熱伝導性物質として機能するウィルスフィルム,レアアースの吸着剤として機能するウィルスなどの調製方法およびその特性についての紹介がありました。

 京都大学の斉藤尚平氏より「光で剥がれる液晶接着材料の開発」と題した研究紹介が行われました。
 「液晶は柔らかいので接着には使えない」という従来の常識を打破する「光で剥がせる接着材料」として開発された凝集力の高いカラムナー液晶について,その分子設計・接着能・接着力の起源に関する紹介が行われました。この開発された接着剤は,100℃でもガラス基板を強く接着できる一方で,波長が365 nmのUVを当てると3秒で剥離できるというユニークな特性を有していることが報告されました。

 DIC株式会社の堀米氏より「両末端疎水型会合性高分子が形成するソフトな粒子凝集とその発現メカニズム」と題した講演が行われました。
 水分散型塗料の基材への塗布過程において重要となるレオロジー特性を支配する因子のひとつが,ミクロな粒子挙動であることを粘弾性測定結果をもとに紹介されました。講演の中で,両末端疎水型会合性高分子は高濃度領域では,ポリマーの形成するネットワーク中で分散粒子が安定化される一方で,低濃度領域ではポリマー末端の疎水基が微粒子表面に吸着し,ブリッジを形成するため分散粒子が凝集することが明らかになったと報告されました。
 大阪工業大学の藤井秀司氏より「気液界面への微粒子吸着現象を利用する機能性材料の創出」と題した講演が行われました。
 固体微粒子によって安定化された気泡やリキッドマーブルの調製やその応用例について紹介がおこなわれました。応用例の一つとして,光応答性を持つ微粒子で覆われたリキッドマーブルは,近赤外線を当てることで熱を発し,マランゴニ対流を生じるため,内包物の運搬・他の物質を運搬する駆動力に利用できることを報告されました。

 日東電工株式会社の島津彰氏より「高分子の接着界面現象に関する分子シミュレーション」と題した講演が行われました。
 一般的にシミュレーションが困難とされる高分子が界面に接着する現象についてのシミュレーション方法についての紹介がありました。スーパーコンピュータを用いた分子動力学法によって,三百万個の原子を有する高分子1本鎖の吸着挙動を解析することで,アクリル系高分子接着剤の被着体への特異な剥離現象を見いだすことに成功したと報告されました。
 交流会もたくさんの方にご参加いただき, 様々な意見交換が行われました。