↑ Return to 活動記録

第3回ソフトマター工学分科会講演会・会員総会

 2018年7月27日(金)に東京農工大学小金井キャンパス 科学博物館 3階 講堂にて第3回ソフトマター工学分科会講演会および会員総会を開催しました。短い講演時間ではありましたが5名の先生方に幅広いジャンルのご講演をいただき,学生17名を含む35名の参加者は熱心に耳を傾けていました。また,質疑応答では様々な専門分野からの質問がなされ,活発な議論が行われました。

  慶応大学の堀田篤先生より「エレクトロスピニングによるナノファイバーとその複合化」と題する講演が行われました。
エレクトロスピニング法と鹸化を併用したプロセスでセルロースをナノファイバー化できることが紹介されました。また,セルロースナノファイバーを他種材料と複合化する際は,ナノファイバー表面を対象となる基材で表面修飾することが重要であることが報告されました。
 三井化学株式会社 岡本勝彦様より「熱可塑性エラストマーの設計と高機能化」という題目で講演が行われました。
良いポリマーを作るには,触媒から設計することが大事というコンセプトをもとに,メタロセン触媒を用いて開発された熱可塑性エラストマー製品を題材として機能性発現に重要なポリマーの設計指針について報告がありました。特にポリマーの粘弾性制御の観点から説明がありました。また,開発されたポリマーがどのような製品へ応用されているかについても実製品を交えて紹介がありました。
 東京工業大学の田中祐圭先生より「磁性ナノ粒子生合成から端緒を得た機能性バイオナノ材料の合成」という題目で講演が行われました。
環境中でナノ磁性粒子を合成する磁性細菌と呼ばれる細菌からヒントを得た新規な機能性ナノ材料合成に関する研究が紹介されました。
生物によって合成される磁性ナノ粒子近傍に存在するタンパク質の解析から粒子合成に重要な役割を果たすタンパク質を同定し,その機構を利用した脂質チューブの合成法に関する報告がありました。また,粒子合成候補ペプチド配列をスポット合成した薄膜を作製し,それを金イオン溶液に浸漬することで各ペプチドによって金ナノ粒子がスポット上に合成され,その光学特性を画像解析することで粒子物性を予測できる技術についても報告がありました。
 資生堂の中村綾野様より「水溶性増粘剤による化粧品基剤のレオロジーコントロール」という題する講演が行われました。
複雑な組成から成る化粧品の中でも化粧品の使用感触の基本となる水溶性増粘剤に関する研究開発事例について紹介がありました。ミクロゲルを水溶性増粘剤として使用すると,さっぱりみずみずしい使用感触を呈し,ゲル粒子同士の衝突による増粘効果も期待できることが報告されました。また,化粧品の使用感触の評価手法としてはこれまで開発担当者が主観的に行っていたが,レオメータで得られたデータをNuttingパラメータでフィッティングすることで客観的に評価ができるようになったと紹介されました。
 東京農工大学の荻野賢司先生より「特殊構造を有する高分子半導体の設計と応用」という題目で講演が行われました。
高分子半導体の要素となる高分子ブロックコポリマーのミクロ相分離の概念とその構造制御手法に関する紹介がありました。特に有機太陽電池の開発においてはブロックコポリマーによって形成されるミクロドメイン構造の配向を制御することが電子の移動度を高める戦略であることが示されました。また,電子の移動度を増大させるためには,活性層を形成する2種ポリマー両方に共通ポリマーブロックを導入することが大事であることが報告されました。
 今回初めて行われた会員研究紹介(ショートプレゼンテーション)では,合計5名(企業から2名,学から3名)の自己紹介および研究開発内容が報告されました。
 また, 交流会もたくさんの方にご参加いただき, 様々な意見交換が行われました。