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第4回ソフトマター工学分科会講演会・会員総会

2019年7月26日(金)に名古屋大学東山キャンパス ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー3階 ベンチャーホールにて第4回ソフトマター工学分科会講演会および会員総会を開催しました。短い講演時間ではありましたが5名の先生方に幅広いジャンルのご講演をいただき、学生11名を含む30名の参加者は熱心に耳を傾けていました。また、質疑応答では様々な専門分野からの質問がなされ,活発な議論が行われました。

 大阪府立大学の鈴木祥仁先生より「メタクリル酸メチルの重合誘起相分離とTrommsdorff効果」という題目で講演が行われました。
アモルファス高分子のバルク重合中におけるTrommsdorff効果による熱暴走と、ガラス転移現象との関連性に着目した講演が行われました。メタクリル酸メチルのバルク重合中の重合誘起相分離の様子や、温度変化、誘電緩和挙動などについて報告されました。本報告の相分離は、空間的-時間的不均一性によるものであり、Flory-Huggins理論に当てはまらないことが報告されました。
 三菱ケミカル株式会社 主幹研究員の杉浦直樹様より「炭素繊維フィラメントおよびCFRPの各種特性の紹介」という題目で講演が行われました。
CFRPは炭素繊維を樹脂に複合させた材料であり、飛行機などの構造部材に用いられています。そのCFRPの製造法から評価方法まで幅広く紹介していただきました。
CFRPは引張部材として用いると金属部材より高い性能を有するが、曲げ部材として用いることによって更に高い機能を発揮することが報告されました。
そして炭素繊維と樹脂との接着能を向上させる処理の紹介やその接着能の評価方法など、CFRPの特性評価だけでなくいかに機能を最大限に発揮していくかなど詳しい紹介がありました。
 九州大学の織田ゆか里先生より「ソフトマター界面の機能化に向けた分子設計と構造解析」という題目で講演が行われました。
生体関連材料を含む水環境で用いられる高分子材料の機能化、高分子/異種材料間の接着技術の開発、高分子複合材料の機能向上に重要な高分子の設計指針について、界面における高分子鎖の凝集状態やダイナミクスの観点から報告がありました。特にポリビニルエーテル架橋膜の組成の変化による膜の膨潤率、弾性率、血小板粘着数の制御、高分子の濃度や分子量の変化による高分子の界面形成機構の制御について報告されました。
本研究で得られた知見は、高分子薄膜材料、界面改質剤、固体表面の特性制御に応用できると説明されました。
 名古屋大学工学研究科の竹岡敬和先生より「高機能性ソフトマテリアルの分子設計」という題目で講演が行われました。透明性に優れ、力学的にも強い高分子ゲルの作製を目的として、簡便で汎用性高い様々な方法を紹介していただきました。特に、ポリロタキサンと呼ばれる、ポリエチレングリコールとα-シクロデキストリンからなる架橋剤を用いることで、優れた伸張性および弾性を発揮する透明な高分子ゲルが作製可能であることが報告されました。これは従来とは異なる架橋様式であり、実際のゲルの様子を含め、物性やメカニズムについて説明していただきました。
 名古屋大学大学院工学研究科の小山敏幸先生より「フェーズフィールド法へのマテリアルズインフォマティクスの応用」という講演が行われました。
材料開発におけるインフォマティクスの定義、材料分野におけるデータ解析手法の区別、材料工学とデータサイエンスについて報告がありました。
特に、フェーズフィールド法による材料の内部組織の構成法、改良型セカント法による応力ー歪み曲線の解析、そのセカント法から得られた力学特性を出力として、ニューラルネットを学習、そのネットの重みを用いて、材料内部の各特微量に関する特性解析について紹介しました。
 講演後のディスカッションでは、聴衆から講演者への追加質問や今後のソフトマター工学でどのような点が重要となってくるかについての意見交換が行われました。特に昨今話題となっているマテリアルインフォマティクスがどの程度、逆問題の解決に適応できるのか、ソフトマターの分野で既にどの程度、研究が進んでいるのかについて小山先生への質問が集中しました。最後に幹事の名古屋大学の山本先生から次回はどのようなトピックを扱うべきかについて議題があがり、意見交換が行われました。
また、交流会もたくさんの方にご参加いただき、様々な意見交換が行われました。